東京高等裁判所 平成5年(ネ)2724号 判決
控訴人兼附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)
畑中厚子
右訴訟代理人弁護士
上條義昭
同
中村幾一
被控訴人兼附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)
国
右代表者法務大臣
三ケ月章
右指定代理人
加藤美枝子
同
村田英雄
同
平野信博
同
浅井光男
同
遠藤文雄
同
馬場隆信
主文
一 本件控訴を棄却する(なお、反訴請求の一部取下げにより、原判決主文第二項は失効した。)。
二 附帯控訴に基づき、原判決主文第三項を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人に対し、
1 金五一〇四円及びこれに対する平成三年一一月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員
2 平成三年四月二一日から平成四年五月三一日まで一か月当たり金二万二九六八円の割合による金員
3 平成四年六月一日から平成五年八月三一日まで一か月当たり金二万六九二八円の割合による金員
4 右2、3に対する各発生日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員
を支払え。
三 控訴費用(附帯控訴費用を含む。)は、控訴人の負担とする。
四 本判決の主文第二項の金員支払を命ずる部分は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一当事者の求める裁判
(本件控訴について)
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、控訴人が国立癌センターの職員たる地位を有することを確認する。
3 被控訴人は、控訴人に対し、
(1) 金二〇〇万円及びこれに対する平成三年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員
(2) 平成三年四月一日から平成六年三月末日まで毎月一七日限り金二九万四二七六円及びこれに対する各期日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員
(3) 平成三年四月一日から平成六年三月末日までの毎年六月三〇日限り各金五八万八五二二円、毎年一二月一〇日限り各金七三万五六九〇円、毎年三月一五日限り各金二〇万五九九三円及びこれに対する各期日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員
を支払え。
4 被控訴人は、控訴人が原判決別紙第一物件目録記載の浴室を使用することを妨げてはならない。
5 被控訴人の反訴請求を棄却する。
6 訴訟費用は、第一、第二審を通じ、被控訴人の負担とする。
7 2、3につき、仮執行宣言
二 被控訴人
控訴棄却
(本件附帯控訴について)
一 被控訴人
1 主文第二項と同旨(請求の一部拡張)
2 附帯控訴費用は、控訴人の負担とする。
二 控訴人
附帯控訴棄却
第二事案の概要
次のとおり、訂正、付加するほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決八頁七行目の「現在まで、」(本誌六三四号〈以下同じ〉15頁1段18行目)から八行目までを「本件建物部分に居住していたが、平成五年八月三一日、被控訴人に対しこれを明け渡した。」に改める。
二 同一〇行目の「あった」(15頁1段19行目)の次に「が、平成四年六月一日から一か月当たり金八九七六円となった(この改訂は法令の改正によるものであるが、控訴人は、右額につき明らかに争っていない。)」を加える。
三 同九頁八行目の「三倍は」(15頁2段8行目)の次に「、平成三年四月一日から平成四年五月三一日までは」を、同行目の「である」(15頁2段8行目)の前に「、同年六月一日から平成五年八月三一日までは二万六九二八円」を加える。
第三争点に対する判断
次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実及び理由の「第三 争点に対する判断」欄の一から六(同二六頁六行目(18頁1段3行目)から同四二頁八行目(20頁4段13行目))までに記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決二九頁一〇行目の「乙第七号証」(18頁3段16行目の(証拠略))の前に「乙第六号証、」を加え、同三〇頁八行目の「非密封清放射性廃棄物」(18頁3段30行目)を「そのほか、控訴人は、非密封放射性の廃棄物」に改める。
二 同三一頁三行目の「しかしながら」(18頁4段11行目)から同三二頁五行目末尾(19頁1段7行目)までを次のとおり改める。
「しかしながら、右認定の具体的業務は、個々的に観察すると、単純な労務も含まれているが(例えば、右業務のうち、検体の運搬作業、医薬品の受領及び交付作業、清掃作業、消耗品の管理、後片付け作業、衣類の出し入れ作業、RIフィルムバッジの集配作業等がこれに当たる。)、このような作業でも、控訴人が配置されている臨床検査部RI検査室の検査業務との関わりにおいて行われる作業であり、RI検査が放射性同位元素を用いるということから、少なくとも、放射性物質に関する基礎的な知識や取扱法を習得する必要があるし、更に、右業務のうちには、RI濃度測定のモニタリング装置の監視、同モニター装置の異常表示の通報、排水バルブの開閉とポンプ操作によるRI濃度の法定基準値内の保持等といった業務が含まれていて、これらの業務は、通常はさほど困難を伴うものではないとはいえ、少なくとも、RI濃度測定のモニタリング装置に係る基本的な機能やその操作方法に関する経験的知識及び習熟に基づく技能を必要とすることは明らかである。また、乙第二号証の一ないし四、第六号証、第七号証の一二ないし一四、第八、第九号証の各一ないし六、第一〇、第一一号証の各一ないし四、第一二号証と前記高橋証言によれば、国立癌センターでは、放射線障害の発生を防止し、公共の安全を確保することを目的として、放射性同位元素及びこれによって汚染された物等の取扱い及び管理に関する事項を定め、業務従事者(放射性同位元素等又は発生装置等の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事するために管理区域に立ち入る者で、病院長が業務従事者として承認した者)の遵守すべき事項を「国立がんセンター病院放射線障害予防規定」として定めているが、RI検査室は、放射線障害のおそれのある場所である管理区域に指定され、控訴人もこのRI検査室に立ち入って作業を行うものであること(このことから、控訴人は業務従事者として承認されていたと推認されること)、右規定の周知徹底を図り、放射線障害を防止するため、業務従事者は、取扱業務の内容に応じて必要な教育と訓練を受けなければならないとされているが、そのための講習会や定期研修会に控訴人も参加し、専門的知識の習得に努めていたことが認められ、このことからしても、控訴人の業務(ないし作業)は、一定の経験的知識と技能の習得を要求されていたというべきである。そうすると、控訴人の臨床検査助手としての業務は、控訴人の主観的認識はどのようなものであっても、特に知識、技能を要せず、年齢や経験による影響が比較的少ない単純労務を業務とする、用務員、労務作業員、炊事婦等と同一視することはできないものというべきである。」
三 同三三頁五、六行目の「職務の級の分類からいっても」(19頁1段29~30行目)から同八行目末尾(19頁2段5行目)までを「職務の級別比較基準からいっても、その業務の複雑因難性及び責任の程度からすると、前記人事院規則九―八別表第二のロ(行政職俸給表(二)級別資格基準表)の備考1三にいう労務職員(乙)に該当するものではなく、同備考1一(4)に準ずる者として、同(7)の技能的業務に従事する者に該当するものと判断するのが相当である。」に改める。
四 同三四頁八行目の「三等級がら」(19頁2段27行目)を「三等級から」に改める。
五 同四二頁一行目の「公務員宿舎」(20頁3段30行目)から同二行目の「義務があるとともに、」(20頁4段1行目)までを削り、同五行目の「並びに」(20頁4段7行目)から同六行目の「損害金」(20頁4段9行目)までを「並びに平成三年四月二一日から平成四年五月三一日まで一か月当たり金二万二九六八円の割合による、平成四年六月一日から平成五年八月三一日まで一か月当たり金二万六九二八円の割合による各損害賠償金」に改める。
第四結論
よって、控訴人の本訴請求は失当であるからこれを棄却し、被控訴人の反訴請求(当審での拡張部分を含む。)は理由があるから認容すべく、原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし(なお、反訴請求の一部取下により、原判決の主文第二項は失効した。)、被控訴人の附帯控訴に基づく反訴請求拡張部分は右のとおり認容すべきであるから、これに伴い原判決主文第三項を変更することとし、控訴費用(附帯控訴費用を含む。)の負担につき、民訴法九五条、八九条を、仮執行宣言につき同法一九六を(ママ)適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 三代川俊一郎 裁判官 伊藤茂夫)